2010年10月16日土曜日

『Politics!Politics!Politics and Political animals!』


16日のこと 伊丹まで舞台を観に行って来た
エイチエムピー・シアターカンパニー2010年新作 
『Politics!Politics!Politics and Political animals!』
岸田理生さんの「リア」を原作とした作品

エイチエムピー・シアターカンパニーは大阪を本拠にハイナーミュラーを主に上演している団体で
今年のリオフェスティバルにも参加していたのに
私はちっとも知らなかった ごめんなさい

ハイナーミュラーを題材として選んで舞台創りをしているというだけで
無条件に応援したくなるのに ましてや今回は理生さんの作品
わざわざ関西まで出かけて行ってでも観たい舞台でした
行って良かった
舞台美術はハイナーミュラー作品のような雰囲気
白く小さな四角形の積木のような箱が整然と並べられ
舞台下手からその積木たちに照明が当てられている
一枚の絵のように静謐で無機質な舞台
その片隅に日常を思わせる ティーポットやカップが当たり前のように配置されていた
一瞬で「狂気」を感じる 空気

母と娘二人 それから白いコロスが数人
娘は最初長女かと思っていた雰囲気の女優さんが実は次女で
可憐な雰囲気の女優さんが長女だった
コロスの俳優さんたちはほとんどが皆若い 学生さんなのかな
母親役は多分故意にくたびれた中年女の風貌に作られている
腹部にたるんだ肉 猫背 疲れきったような目の下のクマ

それに比べ存在しない父親はスクリーンの中で随分とスタイリッシュないでたちで
現実感をまったく伴わない しゃれた帽子をはすにかぶって
きっと仕事はデザイナーとかそんなんで 決してサラリーマンではない
現代の父親像ってああいうのなのかな
もっと父親像を曖昧にした方が良かった気がします

長女はヒステリックにかつ確固たる自信を持って喋り続ける
自分の行為を疑ったり悲嘆にくれる様子など微塵もない
先日座・高円寺で観たキム・アラさんの「リア」に出てくる長身で悪女風の長女とはまるっきりかけ離れた長女像だ
長女役の高安美帆さん(ブログ: http://ameblo.jp/miho-hmp-theater-company/)という方は
クルクルと動き回り 切り替えが早くて 何でも出来るんだろうなと思った 羨ましい

キム・アラさんの「リア」では元岸田事務所+楽天団の先輩木島弘子さんが次女役をやっていたのだけれど いわゆる理生さんがイメージする無垢な少女のイメージで
物語に対して象徴的に存在していたが

今回のこちらの舞台では次女はとても存在が薄い
とても魅力的な顔立ちで存在感もある女優さんなので少しもったいないなと思ったが
とにかく喋り続ける長女と徹底的に対比させているのだとしたら それは成功していたと思う
ただ、序盤で次女がマイムで朝食の支度をするシーンが
とても丁寧でコミカルで面白かったのだけれど
これはその後の次女像を考えると ちょっと浮いていたかな
もっと楚々と朝食の準備をしていた方がいいのかもと思った

前半の異様さに比べて 後半の家族が壊れていく様にあまり驚きがなくて
私は少し退屈だったが アイデアと役者さんたちの力に一票入れました

終演後のアフタートーク 演出家、ドラマトゥルク、文芸員の方三者のお話があり
最後に観客から 玉座の扱いについてもう少し違ったほうが良かったのではないかとの意見が出された
最後に妹が玉座に座るとか のアイデアに演出家の笠井氏がそれは面白いと関心していたのが印象的でした 反論とも思えるような意見に耳を傾けられる演出家は信頼できる

帰り際に演出家の笠井氏に自己紹介させていただき、先ほどの三名の方ともお話させていただきました
長女が言う「父」という言葉のアクセントが普通と違うのはなぜかとお聞きしたところ
実は後ろにアクセントがあるのが標準語だとのこと 知らなかった
てっきり大阪弁訛りなのかと思っていました 「乳」と聞こえる「父」の発音に逆に日本語の言霊的なひっかかりを感じて面白かった

それからドラマトゥルクの方に 最初の「暗闇の真ん中~」というハムレットマシーンの最後の台詞の引用についてなぜ理生さんの訳でなく谷川道子さんの訳を使ったのか聞いたところ
理生さん訳があるのを知らなかったとのこと
ああ、そうか あれは公式には出版されてなくて
ハイナー・ミュラー・プロジェクトのディスカッションの時に会場で販売されていたものだったと思い
理生さんがアレンジしたハムレット/マシーンの最後の一節をお伝えしたところ
ずっと悩んでいたところが解明して良かったと喜んでいただけました

長く続けていって欲しい劇団だ
もっと素敵な作品を創り続けていって欲しい
そしてできることなら いつか作り手側に参加させていただける機会があればどんなに嬉しいだろうかと
夢見ながら夜行バスで帰途につきました

次回も観に行きます

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